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2023.06.22|最終更新日:2023.06.23|

生成系AIに関する学生向けガイドライン

生成系AIを理解し、適切に活用しよう

麗澤大学副学長(教育担当) 渡邊信
情報教育センター長 吉田健一郎
データサイエンス教育センター長 小塩篤史

 生成系AI(ChatGPT、StableDiffusion、Bardなど)の能力が飛躍的に向上し、人間が執筆したものと遜色ない言語処理や画像生成能力に大きな注目が集まり、今後の発展に大きな期待が寄せられていることは周知の通りです。これらのAIサービスは大変有用であり、皆さんが社会に出るにあたって、オフィス系アプリを利用したり、適切にデータ処理を行えたりすることと同様に使いこなせるようになることが重要であることに間違いはありません。

 しかし、在学中の学びに当たっては注意すべき重要な点がいくつかあります。そこで、このガイドラインでは、生成系AIとしてよく使われている大規模言語モデル(LLM)の代表例であるChatGPTの活用を具体例として、本学では学生諸君に身につけて欲しいスキルや姿勢・態度を広く周知するとともに、望ましくない利用態度や利用方法について、次の(1)〜(5)を示すこととします。ChatGPT以外の生成系AIについても同様に、このガイドラインを参考に適切な活用を心がけてください。

 なお、大規模言語モデルをはじめとした生成系AIは、現在すさまじい勢いで進化を続けています。また、この技術的革新に伴って社会や制度が今後大きく変化することが予想されます。そのため、このガイドラインは今後も随時見直しを行い、状況に即した形で示していくことを計画しています。

【1】文章が出力される仕組みについて、基礎的な理解をする。

ChatGPT、それは大きな本の山を読むロボットだと思ってみてください。そのロボットはたくさんの物語、事実、会話、そしてさまざまな情報が書かれた何千もの本を読んでいます。しかし、このロボットは特定の本の内容を覚えているわけではなく、それらの本から「言葉のパターン」や「どんな言葉がよく一緒に使われるか」を学んでいます。

例えば、"The cat is on the ____" という文があった場合、ロボットはたくさんの本を読んで、「cat is on the」の後にはよく「mat」や「tree」などが来ることを学びます。だから、あなたが "The cat is on the" と入力すると、ロボットは "mat" や "tree" を推測してその空欄を埋めることができます。

したがって、あなたが何か質問をすると、このロボットはその質問に答えるために最もふさわしい「言葉のパターン」を考え出して答えを作り出します。しかし、ロボットは自分で考えるわけではなく、「言葉のパターン」を使って答えを作っているだけだということです。

【2】実際に使ってみることで、何ができて何ができないのかを積極的に理解しようとする姿勢を持つ。

2023年5月時点では次のような使い方が主にされています。どのような使い方が自身の学びにとって活用できるかを考えて、積極的に利用してみましょう。

文書作成や文書アウトラインの生成:
ChatGPTは文章やアウトラインの作成を支援します。たとえば、特定のトピックについてのエッセイのアウトラインを作成したい場合、そのトピックといくつかのサブポイントをChatGPTに指示すると、それに基づいたアウトラインを作成することができます。
翻訳:
ChatGPTはある言語から別の言語への基本的な翻訳を行うことができます。ただし、専門的な翻訳ソフトウェアと比較して、精度や正確さは多少劣る可能性があります。
文章の修正・トーン変更:
ChatGPTに文章を与え、それをある特定のトーン(例えば、フォーマル、カジュアル、楽観的、悲観的など)で再度書き直すよう指示することができます。
文章要約:
ChatGPTに長い文章を与え、それを短く要約するよう指示することができます。この機能は、複雑なレポートや記事の主要なポイントを把握するのに役立ちます。
コンピュータープログラムの作成や修正:
ChatGPTはプログラムコードの生成や修正にも利用することができます。具体的なコーディングの問題を提示すると、それに対するソリューションを提案することができます。
調査・分析:
ChatGPTは、その訓練データに基づく基本的な調査と分析を行うことができます。ただし、これはあくまでAIが訓練データを基に生成した情報であり、最新の情報や非公開の情報を提供する能力はありません。
ディスカッション・ブレインストーミングの壁打ち相手:
ChatGPTはアイデアのブレインストーミングをサポートすることができます。特定のトピックや問題について思考を深めるための質問を提供し、新たな視点や考え方を提案することができます。
応答の長さや文体の指定:
ユーザーはChatGPTに対し、特定の文体(です・ます調、硬い文章、子供向けなど)での回答や、箇条書きや表形式での回答を要求することができます。

【3】授業で課されるレポートや論文に利用する際、理解していない回答が出力された場合は理解できるまで調べ、自ら考える癖をつける。

AIはあくまでも「可能性が高い(ように思われる)答え」を出力しているだけであり、その回答の正確性や信憑性については検討していません。私たち教員は、大学での学問を通じて、学生諸君に、これからの人生を生きていく上で必要になる力を身につけてほしいと心から願っています。課題やレポートには、自ら真剣に取り組むことで、皆さん自身が成長する機会になるという大きな意義があります。仮にこれがAIの出力をそのままコピー&ペーストするだけの作業に終わってしまっては、せっかくの成長の機会が失われてしまいます。また、場合によっては剽窃となる可能性もあります(下記(4)参照)。

調べる際、プロンプトを工夫して、自分がわかるような出力結果を作るなど、AIを通して学ぶのも、今後の新たな学びの形です。

【4】使用の程度や内容によっては盗作・剽窃であると判定されますので、レポートや論文作成にあたってはオリジナリティを追求する態度を形成する。

2023年5月時点では、生成系AIが出力した成果物の著作権について、専門家の間でも明確な扱いが定まっていません。しかし、生成系AIの回答をそのまま使った場合、それはあなた自身の著作物として認定されず、他者のものを無断で盗用した(剽窃)とみなされる可能性があります。

AIの出力をそのまま引用するだけでなく、自分の思考と分析を元にしたオリジナルの作品を制作しましょう。そして、レポートなどに出力内容を利用した時は、自らの考察や考えと区別し、使用した箇所を明示し脚注などにプロンプトを記述するのも良いかもしれません。

AIが出力した内容を自分なりに吟味し、考え、自分らしい要素を加えるように心がけましょう。今後皆さんはますますAIを活用して、学習や仕事をすることになりますが、AIを使いこなすには、AIの内容を参考にさらに自分なりの思考を進めることです(そのためには、Googleと同じような使い方ではなく、ChatGPTと「対話」を行っていくスキルを磨いていくことが重要)。

【5】利用にあたっては「個人情報の入力」、「回答の真偽」と「各種責任への意識」に留意する。

ChatGPTへの質問として、個人情報を含んだ内容などは入力しないようにしてください。

質問に対する回答が誤りを含んでいたり、でたらめの寄せ集めになったりすることがあるので、回答の真偽を常にしっかり確認してください。

生成系AIを使うことにより、自分自身にどのような倫理的・法的・社会的な責任が生じるのか(例えば、ChatGPTの回答を鵜呑みにして誤ったことを発信してしまうなど)を常に意識しましょう。なお、これらの責任概念は今後大きく変化する可能性があるため、生成系AIを活用する場合は、それらに関する最新動向を常にチェックしておくことが必要です。