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教育・研究
2025.02.04

【開催報告】公認心理師・臨床心理士の露木友子氏による特別講義を実施

 202519()、自主企画ゼミナール21世紀型教育方法の探究」(担当教員:外国語学部 花田太平准教授)において、公認心理師・臨床心理士として多角的に活動しておられる露木友子氏をゲストスピーカーにお迎えし、特別講義を実施しました。

 自主企画ゼミナールとは、学生が学びたいテーマを見つけ、 学生が自ら指導を受ける教員を選び、 何をどのように学習していくかについて、 該当教員の助言を受けながら決定し、 学習計画を立てその計画に従って進めていくゼミナール制度です。 

 露木氏は、児童相談所、児童養護施設付帯の児童家庭支援センターを経て、精神科クリニック、大学の学生相談室、総合病院(小児科)などでご勤務されました。2020年、日本劇作家協会と契約を結んだことをきっかけに、演劇現場でのハラスメント対応に携わるようになり、現在は、東京芸術文化相談サポートセンター・アートノトで専門相談員もしています。 

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自己紹介で趣味について語る露木氏

 今回の講義は「​自分と違う人がいる場所で働くということ:カウンセラーと考える新しい時代のコミュニケーション」をテーマに、露木氏のご経験を通して、コミュニケーションの重要性について学びました。

 はじめに、舞台芸術に関わる方向けのハラスメント研修の内容についてお話しいただきました。お話の中で、演劇業界全体が関わるトラウマから、ハラスメントに対する考えを述べることに不安を感じる人が少なくないことや人間関係が狭く、知人の耳に入ることを恐れ率直に話し合えない環境など、演劇業界が抱える問題をご紹介くださいました。

 その後、露木氏が携わっている被爆体験を伝えるVR制作の裏側についてもお話しいただきました。このVRは、被爆者の高齢化に伴い、直接対話する機会が少なくなる中、その記憶を仮想空間に再現することで、被爆体験を国内外に伝えていくひとつの手段としたいという思いから制作が進められています。露木氏はキャストのオーディションから参加し、インティマシーコーディネーターと協働して、被爆者の記憶や語りを再現するための特殊メイクや緊張感のある演技を求められる俳優のケアのほか、アクシデントの予防に取り組まれた経験をお話してくださいました。自主企画ゼミナールを通じて、これまで日本の戦争に関する跡地や資料館を訪れるフィールド調査を実施してきた学生たちは、熱心に聴き入っていました。

 最後に参加学生全員が講義を聞いた感想を発表しました。学生たちは、それぞれ感想を述べ、現役カウンセラーとともに互いを尊重するコミュニケーションのあり方について理解を深める大変有意義な時間となりました。

 尚、本活動は麗大麗澤会チャレンジ支援事業The Seedによる助成を受けています。

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              円になり露木氏の話を聞く学生たち
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              講義後、感想を発表する学生の様子

学生の感想

・芸能の現場の舞台裏は知る機会がほとんどなく、自分とはかけ離れたものだと思っていたが、演者の方たちと向き合い続ける露木さんのお話を聞いて、自分自身にも当てはまることや心に残る言葉がたくさんあり、不思議と励まされる感覚でした。
 中でも露木さんの危機的な状況では「嘘をついてもよい」というルールが特に印象に残っています。嘘を全て肯定するわけではありませんが、自分自身を守るため、時には裸の心を包むベールのような役割を担うのではないかと感じました。

・露木さんは「心理師として現場にいる必要はなかったのではないか」と感じることもあるとお話しされていたが、露木さんが担当した現場の役者たちの様子を聞いて、むしろ多くの人がカウンセリングを必要としているのではと感じました。本人の意識の外で精神的なダメージを受けていることは多く、一般的にもカウンセリングを受けることの抵抗感をなくしていけるような活動をしてみたいと思うきっかけになりました。まずは一度自分もカウンセリングを受けてみたいと思える時間でした。

・ハラスメントのお話で、俳優さんが次の新しい仕事に影響を及ぼさないために、現場でハラスメントを受けても耐えるしかない状況にあることを知りました。誰でも自分の意見を言うことのできる場、またそれが否定されず対等に受け入れられる場が対話空間と同様に大切であると感じました。私もそういった場をつくることのできる存在になりたいです。