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教育・研究
2025.11.25

【開催報告】外国語学部・花田ゼミで特別講義「ダイアローグ×演技:エンボディメントを通じて感情を探究する」を開催

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2025年11月17日(月)、外国語学部の花田太平のゼミナールにおいて、特別講義「ダイアローグ×演技:エンボディメントを通じて感情を探究する」が実施されました。今回は、公認心理師として臨床に携わり、舞台芸術におけるインティマシー・コーディネーションにも携わる露木友子氏と、俳優として活動中の小泉一真氏をゲストに迎え、対話と演劇を組み合わせた実践的なワークが行われました。

近年、対話実践においては言葉だけでなく「身体を通した理解=embodiment(身体化)」の重要性が注目されています。しかし、言語的アプローチを専門とする実践者が多い中で、身体の役割や対話空間における身体性については十分に検討されてこなかったのが現状です。本特別講義では、演劇で培われてきた身体表現や感情へのアプローチを、実際に観察し、体験し、語り合うことで、対話実践に応用できる可能性を学生とともに探究しました。

講義はまず、露木氏による講演「感情準備――誰もが傷ついている」から始まりました。「感情準備」とは演技の技法であり、トレーニングを通じて演技に活かされるものであると紹介されました。露木氏は「俳優は最初から俳優であるわけではなく、トレーニングを重ねて演技を磨く」と語り、「俳優は感情を表現するのではなく、大きな感情を抱える人物として行動し、真実を生きる。つまり、自身の感情を取り扱いながら行動している」と説明しました。誰もが心の傷を抱えており、俳優も例外ではないという点が強調されました。

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その後、小泉氏とゼミ生で松竹エンタテインメント俳優スクールに通う田中美鈴さんによる演劇実演が行われました。小泉氏が主役として、怒りや恐怖、喪失などの強い感情を声や身体の動きを通して表現すると、教室は緊張感に包まれ、学生たちは息をのみました。演技終了後には、「人の感情が飛び出していて驚いた。しかも演技だとは思わなかった」「すごく感動した」「自分の中に秘めた気持ちが現れていた。このように外に出せたら楽になるかもしれない」といった感想が学生から寄せられました。

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続いて、露木氏と小泉氏も交えた6人1組のグループ対話が行われ、テーマは「あなたにとって痛みや怒りなど強い感情にはどのような意味がありますか」でした。約15分の対話の中で、学生たちは「怒りは相手がいるからこその感情で、伝えたいことがあるときの手段になる」「痛みがあるからこそ怒りも生まれる」「これまで感情的と言われるのが怖かった。感情を抑えた後はどうなるのだろう」「感情を外に出すことで少し楽になるかもしれない」といった意見を交わしました。

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次に2回目の演技が行われ、今度は田中さんが主役として自身の過去の経験を振り返りながら強い感情を表現しました。学生たちは1回目の演技を見た経験も踏まえ、「男女での感情表現の違いを感じた」「1回目を見て少し心構えができた」といった気づきを得ました。

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その後のグループ対話では「感情はコントロールすべきか」「そもそも感情はなぜ生まれるのか」といったテーマで議論が進み、「コントロールしないと現場がうまく回らない」「抱え込むと辛くなるが、コントロールの方法はさまざま」「感情はコミュニケーションの道具としても重要」といった個々の考えが共有されました。

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今回の特別講義は、演劇の身体知と心理・対話の知見を融合させ、感情を深く理解し他者と語り合う貴重な体験の場となりました。学生たちは自分自身の感情を見つめ、他者の感情を受け止める新たな視点を得ることができました。ご協力いただいた露木友子氏、小泉一真氏、田中美鈴さんに心より感謝申し上げます。