お知らせ
【開催報告】第1回「情報・メディアチュートリアル」AIは私たちの世界をどう変えるのか?
2025年12月11日(木)、国際学部 国際社会・国際情報(ISI)専攻による新しい取り組み「情報・メディアチュートリアル」の第1回が開催されました。今回は中園長新准教授が進行役となり、ISI専攻の1年次生を中心に学生・教職員が集まり、AI時代をどう生きるかについて活発な議論が行われました。
本企画の冒頭では、中園准教授がAIの基本的な仕組みと理念をわかりやすく紹介し、「そもそもAIとは何か?」という問いを投げかけました。その上で参加者一人ひとりに、AIに対する印象や日常での向き合い方について意見を求めました。参加者からは、「AIが考えてくれることで、人間が思考停止してしまうのではないか」という懸念の声がある一方、「自分のアイデアを整理する時に比較対象として役立つ」「学習や課題の中で、必要な情報を素早く得られるのが便利」といった前向きな声も寄せられました。
教職員からは、実体験を交えた意見が共有されました。授業で学生に調べ物をさせる際、「AI検索モードは使用しないように」と指導している教員は、「AIはまだ正確ではないので、誤った情報をそのまま真実だと思い込んでしまう危険性がある」と述べました。一方で、録音データの文字起こしなど、AIが得意とする作業では業務効率が大きく向上することに触れ、「使い方次第で力を発揮する」とも語りました。
続いて、生成AIの仕組みや社会への影響について解説が行われました。大規模言語モデル(LLM)によって文章生成が可能になった現在、技術の進歩は職業のあり方にも影響を及ぼしつつあります。自動運転技術の普及や大学職員の業務変化など、身近な例を通して学生たちは、AIが社会構造そのものに影響を与える存在であることを実感したようでした。
本企画の後半では、「教育は生成AIを排除できるか?」という問いが提示されました。中園准教授は、強制的にAI利用を禁止することには限界があるとし、「調べ物をする時、検索結果の最上部にAI生成の回答が表示される時点で、完全に排除することは難しい」と指摘しました。その上で、課題に生成AIを使うことがなぜ問題なのかを改めて説明しました。「AIが考えた内容をそのまま提出しよう」という姿勢は、課題の本質である"自分で考える"という学びを放棄することであり、不正行為に近いものだと説明しました。生成AIの善悪ではなく、倫理観の問題として捉える重要性を強調し、AI時代にこそ普遍的な倫理が求められていると指摘しました。
また、話題はAIの「ハルシネーション」(誤情報生成)にも及びました。「人間の嘘よりもAIの誤情報に強い怒りを感じる」という心理学的現象に触れ、AIへの期待が高まるほど、誤情報への失望も大きくなり得ることが紹介されました。その上で、AIの回答をうのみにせず、根拠を確かめながら活用する姿勢の大切さが共有されました。
後半は学生・教職員が混ざってのグループ対話へと移行し、「AIとどんな関係性でいたいか」「今後のAIに何を期待するか」「AIと共生する社会で、人間に求められるものは何か」について議論が行われました。参加者からは、AIを「コーチのように使って自分を高める存在」と捉える声や、「企画立案の壁打ち役として利用している」という実践的な意見が出されました。中には、「AIには使われたくない。あくまで"ツール"として扱いたい」という率直な意見もあり、多様な価値観が交差しました。
議論の最後には、AIによって社会がどのように変わっていくのかという未来への視点が語られました。「AIにとって代わられる仕事は何だろう」「人間同士が争わない戦争は生まれるのか」といった問いを起点に、テクノロジーが社会の構造や価値観に与える影響について、多角的に考える時間となりました。意見は、暮らしの中の変化や将来像にまで広がり、「空飛ぶ車に乗りたい」という未来への夢から、「AIと共に生きるために、人間自身が何を信じるかを問い続けたい」という哲学的な視点まで、幅広く交わされました。
活発な対話と、学生一人ひとりの真剣な姿勢が印象的だった今回のプログラム。ISI専攻が掲げる「情報・メディアを適切に活用し、誤った情報や偏った情報に惑わされず、自ら論理的・批判的に考え行動できる力」を育てる第一歩として、大変意義深い時間となりました。
「情報・メディアチュートリアル」は今後も不定期に開催予定です













