経済社会総合研究センター 研究活動

2011年度 東アジアの道徳経済一体論

プロジェクト内容

本研究は、日中韓において経済活動の規範化がどのように行われてきたのか、或いは
行われているかについて道徳道経一体論を軸に検討する。日本の場合、道経一体論は明治初頭の渋沢栄一に始まる。個人と国家の素朴な一体観が蔓延していた明治が終わり、1910年代からは個人と全体の分離が始まり、新たな均衡・規範化が求められた。個人と全体の直線的な一体観が壊れ、日本社会の軌道修正をはらんで、両者を繋ぐ何らかのより「正当」な媒体が求められたのである。その媒体‐天皇、軍、企業、地域のそれぞれよって進む方向は大きく変わる。いずれにせよ個人と国家を媒介する帰属意識が必要であった。大正期から昭和期は、その正当性をめぐる様々なレベルでの対抗ととらえることができるだろう。廣池千九郎もまた、自説を展開し実践した時代の闘士であり、その道経一体論の強さも弱さも、こうした時代の文脈のなかでとらえて、初めて意味を成す。道経一体論は大正・昭和期に入ると茫漠化する。戦前から戦後への繋がりに至っては、ほとんど系譜不明という現状こそが、問題の深刻さを物語っているとい言えよう。本研究では、昨年度の近年日本の道経一体論研究を踏まえ、それを近現代に広げて一層強化しつつ、さらに対象を東アジア、とくに韓国、中国の近現代に広げ、相対的かつ「同時代」的な検討に進みたい。

プロジェクトメンバー

◎佐藤 政則 経済学部・教授
 中野 千秋 経済学部・教授
 櫻井 良樹 外国語学部・教授
 大野 正英 経済学部・准教授
 藤井 大拙 モラロジー研究所経営者活動推進課・課長
 陳 玉雄  国際経済学部・助教
 [協]金 聖哲 言語教育研究科・比較文明文化専攻博士課程