企業倫理研究センター インフォメーション

【開催報告】平成24年度第2回公開研究会 小山 嚴也 氏

平成24年11月24日、平成24年度第2回公開研究会が生涯教育プラザにて開催されました。関東学院大学経済学部教授の小山嚴也氏をお招きした今回の講演では、「CSRのマネージメント―イシューマイオピアに陥る企業―」というタイトルで、CSR(Corporate Social Responsibility)、つまり「企業の社会的責任」をテーマに、いわゆる不祥事が発生するメカニズムと、これに対し企業がどういう考えでどう対処してきたのかについての研究報告と提案が行われました。
 わざと不祥事を起こそうとする企業は存在しませんが、それでも次から次へと不祥事は起こり、ニュースのトップを飾ることもしばしばです。このような不祥事については、一般的には企業倫理の欠落などが指摘されがちですが、一個人ならともかく、巨大組織で起こる問題をこういった倫理観だけで説明するのは難しいところです。

 発生のメカニズムに目を向けると、争点とも課題とも訳が可能な「イシュー」(issue)、つまり社会が現在関心をもって注目している、または今後そうなる可能性がある事柄に関して、企業が如何に考え如何に対処しているかが不祥事の予防に繋がります。しかし、困ったことに、イシューの種類と数はあまりにも膨大であり、また一見無関係に見えるイシューの間にも実は関連性があったりと、「認識できない」というリスクが数多く存在します。また、従来は一定の理解が得られた行為でさえも、時代の変改により不祥事と捉えてしまうことがあり、その変化に乗り遅れた代償は「認識が甘い」という批判になって返ってくることになります。

 このようなイシューの特徴から、イシューマイオピア(issue myopia)、つまり企業が特定のイシューのみを認識し、他のイシューに注意を払わなくなる現象が発生し、企業としては頑張っているつもりでも、結果としては最悪になってしまうケースがしばしば発生するそうです。今回の研究報告で挙げられた事例が正にそうであり、食中毒事故への事後対応を頑張ったものの、その後子会社の起こした問題(牛肉偽装事件)を未然に防ぐことができなかったため、グループに甚大な被害を与えた一連の流れは色々考えさせられるところがありました。
講演の最後では不祥事を未然に防ぐことができた成功例などの紹介を交えながら、質疑応答や補足説明が行われ、講演が終了となりました。

次回の第3回公開研究会は12月7日、「企業不祥事と組織風土」をテーマに開催予定です。

(麗澤大学 大学院生 記)

講師の小山嚴也 氏
講師の小山嚴也 氏
司会の中野副センター長
司会の中野副センター長
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