共創空間研究センター インフォメーション
【開催報告】共創空間研究センター 10月研究会を開催
2026年10月15日(木)、共創空間研究センターにて「10月研究会」を開催しました。今回の研究会では、「AIと道徳教育」をテーマに、「AIは道徳教育のあり方を変えられるか」「変えられることはよいことか、悪いことか」という2つの問いをもとに、議論を深めました。
冒頭では、センター長である山下美樹教授から近況報告があり、この夏にポーランドで参加したリーダーシップ研修について紹介されました。研修では、世代を超えて継承されるトラウマについて、歴史や芸術を通じて理解を深められたほか、ホロコーストの歴史に関わる現地の施設等を訪問されたことが紹介されました。こうした経験を通じて、物事を捉える視点が大きく変わったことなど、研修で得られた貴重な学びや気づきについてお話しいただきました。
その後、9月4日の研究会で行った「AI教師と学習効果」に関する議論を振り返りました。前回の研究会では、AI教師による学習効果や教育のあり方について、4つの異なる見方・視点から議論を行いました。また、AIを活用することで学習効果を高められるのか、そもそも「学習効果を高める」とは何を意味するのかについても意見が交わされました。
続いて、今回のテーマである「AIと道徳教育」について議論を行いました。横軸を「AIは道徳教育のあり方を変えられるか」、縦軸を「変えられることはよいことか、悪いことか」とする2つの視点を設定し、参加者は自身の考えに近い位置にマグネットを置きました。その後、Zoomでの参加者を含む4つのチームに分かれ、それぞれの考えについて話し合い、全体で共有しました。
![]()
Zoomチームでは、AIはすでに道徳教育のあり方を変えているとし、その変化を否定的に捉える意見が出されました。廣池千九郎やカント、アダム・スミスの思想に触れながら、道徳と幸福を一致させるうえでの神の存在について考えが示されました。また、AIは神の存在を肯定しないとの考えから、AIによる道徳教育の変化を否定的に捉える意見(Bゾーン)が述べられました。一方で、道徳教育のあり方については判断が難しいとしながらも、AIはさまざまな面で人間を助ける存在であることから、肯定的に捉える意見もありました。ただし、AIを使う人間の活用方法によっては、悪い方向に進む可能性もあるとの考えが示されました。
チーム1では、道徳観は両親や学校の先生、友人などとの関わりや社会生活での経験を通して育まれるものであり、AIには人間と同じような経験や感受性がないことから、道徳教育のあり方を変えることは難しいのではないかという意見(Cゾーン)が出されました。一方で、AIが加わることによって、これまで人間関係の中で培われてきた道徳観に変化が生じる可能性があるものの、AIの能力が高まることで、人間の道徳観が脅かされるのではないかという懸念も示されました。また、AIが持つ膨大なデータや知識、体験によって、道徳教育のあり方が進化し、世界平和にもつながるのではないかという意見(Aゾーン)が出されました。一方で、AIを作るのは人間であり、悪意を持つ人がAIを使用することによる危険性にも触れ、人間が正しい道徳観や倫理観を持つことが重要であるとの考えが示されました。さらに、AIが持つ膨大なデータを人間が学び、子どもたちや社員の教育に活用することで、社会に貢献できるのではないかという意見も挙げられました。
チーム2では、AIに判断を任せきりにすることで、人間が本来持つ主体性や自ら考える力が失われるのではないかという意見(Dゾーン)が出されました。また、AIに限らず、他者から示された考えをそのまま受け入れるのではなく、クリティカルマインドが重要であるとの考えが示されました。これに関連して、大場裕之名誉教授からは、道徳教育においても共創空間の考え方を取り入れ、クリティカルマインドを育む必要があるとの意見がありました。
チーム3では、AIは1対1の教育ができるので、一人ひとりに合った教育が可能になるのではないかという意見(Aゾーン)が出されました。また、AIによって多様な状況を用意し、さまざまな体験をさせることができるため、従来の知識教育とは異なる、より心に訴える教育ができるのではないかという考えが示されました。さらに、AIについて理解を深めるためには、AIがどのように生まれ、使われているのかを知ることに加え、実際にAIを使い、自分自身で問いかけ、その感想を述べることも必要ではないかという意見が挙げられました。
![]()
今回の研究会では、AIによる個別学習や多様な学習機会の可能性について意見が出された一方で、人間関係や実体験を通して育まれる道徳観、AIの活用における人間の主体性や批判的に考える力の重要性など、さまざまな視点から議論が交わされました。
最後に、大場裕之名誉教授から、今回のテーマである「AIは道徳教育のあり方を変えられるか」という問いを実際にAIに投げかけてみることや、AIと道徳教育について生徒に寄り添ったわかりやすい問いを次回考えることが提案されました。
次回の研究会は2026年11月12日(木)に開催予定です。











