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学生生活
2020.03.13|最終更新日:2020.08.13|

2019年度 外国語学部「卒業研究コンテスト」受賞論文について

2019年度卒業生のみなさん、ご卒業、本当におめでとうございます。

外国語学部では、卒業論文(「卒業研究」または「自由研究」として提出)の執筆が必須となっています。一人ひとりがテーマを決め、4年間の学修の成果を一編の論文として著(あらわ)す作業は、多くの学生さんにとって、これまでにない「産みの苦しみ」を味わう体験だったと思います。その過程で得たものを、ぜひ社会に出てからの糧(かて)としてほしいと思っています。

さて、毎年恒例となった外国語学部の「卒業研究コンテスト」、今年度で第9回を数えます。今回も各ゼミから力作が寄せられ、推薦された全15作品を9人の審査員が厳正に審査し、3月初めに受賞論文が決まりました。今年度は最優秀賞が1点、優秀賞2点に佳作4点が選出されました。今年は大作が多く、また審査する教員もその出来にうなる質の高い論文もあり、嬉しい悲鳴でした。

例年であれば3月の教授会の席、または卒業式当日に受賞学生さんを招いて表彰式をおこなっていたのですが、今年度は残念ながら新型コロナウィルスの影響で表彰式は中止となり、受賞者に用意された賞状と記念品も個別に郵送することになりました。

そこで、今回は、コンテストの受賞結果を審査員の講評、また一部ゼミ担当教員のメッセージとともに公開したいと思います。受賞された皆さん、本当におめでとうございます。社会に旅立つ皆さんの今後のご活躍を、教員一同大いに期待しています。

なお、本年度のコンテストの受賞論文は、製本して図書館に配架し、よい卒論を書きたい学生さんが実際に手に取って参照できるようにします。これから卒業論文を執筆する後輩の皆さんは、ぜひ参考にして、素晴らしい先輩の伝統を受け継いでください。 

「卒業研究コンテスト」審査員一同

学部長から皆さんへメッセージ

図書館に配架されている「卒業研究コンテスト」
受賞論文集を手にする学部長

杉山さん、柳さん、安孫子さん、松丸さん、高萩さん、カールソンさん、櫻井さん、受賞おめでとう!どれも本当に高水準の学術論文に仕上がっていました。分野も社会学、言語学、コミュニケーション論、ツーリズムと多様な外国語学部の学びを反映するものでした。みなさんのこと心から誇りに思います! 

外国語学部 学部長 渡邊信

最優秀賞(1点)

杉山 櫻子 (ドイツ語・ドイツ文化専攻, 黒須里美ゼミ)

「子どもの視点から見直す離婚」

本論文は、親の離婚から子供が受ける影響について実証的かつ包括的に研究したすぐれた研究である。離婚に関する先行研究を法的・制度的・歴史的実態を比較的に捉えつつ、日本の制度の欠点を指摘したのち、家族の参与観察をおこない親の離婚が子供の心理や家族の関係にどのような変化を与えるかを分析している。さらに、様々な家庭環境下にいる子どもたちを支援するNPO法人へのインタビューを通じ、先行研究の分析と参与観察から得た知見を親の離婚に巻き込まれる子どもたちへの具体的で信憑性のある提言にまとめることに成功している。

【ゼミ担当教員から】今回はクロスゼミの二人が受賞することになり心から喜んでおります。受賞のニュースは今回受賞した二人だけでなく、一緒にガンバってきたゼミ生たちにとって大いに喜びと励みになっております。ありがとうございます。今年のクロスゼミの発表会の様子はウェブサイト内でも報告されています。こちらよりご覧ください。

優秀賞(2点)

柳 超殷 (日本語・国際コミュニケーション専攻, 千葉庄寿ゼミ)

「日本語と韓国語のオノマトペの対照分析―『ピーターラビット』翻訳文の比較を通して―」

日本語と韓国語のオノマトペへの深い関心のもと、英語作品を原著とする日韓の翻訳を対照する、という手法を自ら考え実践したこと、また原文と訳書を自ら電子化して丁寧に分析し、先行研究の知見をふまえて作品に用いられているオノマトペを比較分類し、結果として日韓のオノマトペの翻訳間に見られる異同を的確に記述することに成功したことが高く評価できる。
日本語の文章も大変こなれており、学部留学生の書くアカデミックな日本語として非常に高い質の論文となっていることも評価したい。

【ゼミ担当教員から】優秀賞受賞、本当におめでとう!地道な入力作業から分析まで、長く時間をかけて取り組んだ研究が質の高い論文に結実したこと、本当に素晴らしいと思います。これからのご活躍を期待しています。

安孫子 帆 (英語・英米文化専攻, 正宗鈴香ゼミ)

「『響く褒め』の可能性 ―自信や積極的な活動を促進するための要素に着目して―」

コミュニケーションツールとしての「褒め」の有用性を追求した質の高い研究である。他者からの「褒め」行為を褒められた側はどう受け止め、それが意識・行動の変化にどう結びつくのかを明らかにしている。「褒め」には、受け止め側の意識にさほど変化を与えないものと変化を与える「響く褒め」の2種類あることを突き止め、「響く褒め」における概念を質的研究法の一つであるSCAT法を用いて抽出し、先行研究にはない要素を見い出している。研究方法や解析方法において誠実に研究が進められており、信頼できる結論を導くことに成功している。

【ゼミ担当教員から】難しいテーマに果敢に挑戦し、粘り強く取り組んだと思います。根拠をもとに真実を見つけ出そうとする真摯な姿勢は立派で、得られた結論は示唆に富むものでした。優秀賞受賞おめでとうございます。

佳作(4点)

松丸 実怜 (日本語・国際コミュニケーション専攻, 大関浩美ゼミ)

「役割語の視点から見たゆるキャラのキャラ語尾使用状況について」

「ゆるキャラ」の話す「キャラ語」の言語学的分析である。キャラ語とは、近年注目されている「役割語」の一種とされ、その言葉を話す人物のキャラクターを印象づける話し方のことである。本論文は、ゆるキャラを対象としたキャラ語研究であり、動物キャラクターを対象におこなわれた先行研究の分析方法を応用し、キャラ語にみられる語尾の特徴が、動物以外をモチーフとしたゆるキャラにどのように現れているかを記述している。考察は妥当であり、文章はしっかりと分かりやすく書かれ、論文全体の体裁も整っている。

【ゼミ担当教員から】おめでとう!とても楽しく読める論文でした。先行研究も松丸さん自身の研究の部分も、しっかりまとめられていると思います。ゆるキャラを見る目が変わる論文なので、たくさんの人に読んでほしいです。

髙萩 玲奈 (英語コミュニケーション専攻, 黒須里美ゼミ)

「にじいろの働き方 ~セクシュアルマイノリティと日本企業~」

日本が世界に遅れをとっている「セクシュアルマイノリティへの理解」という現代社会の課題に挑戦した研究である。先行研究や事例研究から、ジェンダーバイナリーが強調されがちな日本社会の生きにくさ、働く現場でのセクシャルマイノリティの実態を明らかにしている。本研究はセクシュアリティの問題を働き方・働く場の中で探ったことにオリジナリティがある。セクシュアリティへの寛容さが、働き方のダイバーシティ、他者理解、人に優しい社会につながる、という結論は、働き方、職場のありかたを考えさせ、説得力をもっている。

【ゼミ担当教員からのコメントは、最優秀論文のコメントをご参照ください。】

ヨハン・カールソン (日本語・国際コミュニケーション専攻, 瀬川真由美ゼミ)

「『ほんね』と『たてまえ』における外国人とのコミュニケーション・ギャップ」

日本語母語話者であれば直感的に判断できる「ほんね」と「たてまえ」。本研究では、日本語における「ほんね」と「たてまえ」について、日本語母語話者と日本に留学中の外国人日本語学習者にアンケートを実施し比較考察している。アンケートでは4つの場面について調査をおこない、日本語母語話者と日本語学習者のコミュニケーション・ギャップの要因として「人への第一印象」「褒めに対する心理」「断り方の概念」「『和の精神』への理解」を指摘している。誠実な探求態度が読み取れる興味深い研究である。

櫻井 翔太 (国際交流・国際協力専攻, 松島正明ゼミ)

「これからの街づくりを支えるディザスターツーリズム」

自らの東日本大震災の被災経験をふまえて被災地の復旧・復興に関心を寄せ続け、在学中に得た「とびたてJapan」プログラムによる留学機会を活用し、自身が考える「ディザスターツーリズム」を試行錯誤のうえ実践した研究である。日本国内の復興支援では重視されていない復興と宗教の関係や、復興に関する国・地域の差異にも言及するなど、国際協力の現場体験に基づくオリジナリティの高い指摘は大いに評価したい。