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コラム
2024.07.03

学生相談室コラム Vol.52 - 笑いの力、信念を貫く勇気 おススメ映画『パッチ・アダムス:トゥルー・ストーリー』(原題:Patch Adams )

『パッチ・アダムス:トゥルー・ストーリー』、監督:トム・シャドヤック、1998年/アメリカ/本編115分 

 ロビン・ウィリアムズ演じる主人公、パッチ・アダムスは、ハンター・ドーティ・アダムスという名前のアメリカに実在する "クラウンドクター" がモデルになっています。

 クラウンドクターとは、笑いやユーモアが免疫力を高めるという考えから、遊びやコミュニケーションを通じて患者の心身の健康や発達を促す役割を担うドクターの事です。このパッチ・アダムスことH.D.アダムスさんが行っていた活動が認められ、クラウンドクター専門の育成が開始、現在では "クリニッククラウン" や "ケアリングクラウン" など様々な専門職も誕生しています。

 今回ご紹介する映画は、このパッチ・アダムスが大切にしてきた信念、人への思いやりや愛情を描いています。

 アダムスは、自殺未遂の末、精神科の病院へ入院します。そこで出会った患者たちは、医師や看護師から一人の人格を持った人間として対等に接せられず、ぞんざいな扱いを受けていました。アダムスは一人ひとりに気持ちや意思があるのだと言い、相手を知ろうとしコミュニケーションを取ろうとします。交流を通してアダムスは『助けを求めている人を助けられる人間になりたい』と思い医師になることを志します。

 しかし合格した医学部の附属病院で目にしたのは、医師は特別な存在だという医院長や、表情がなく生きている喜びを感じられない環境で入院している患者たちでした。患者自身が何を考え、治療を乗り越えどう生きていこうとしているのか?それをないがしろにしては医学ではない、とアダムスは思います。

 そして彼は患者たちを "笑わせること=笑顔にすること" に力を注いでいきます。道化師に扮して間抜けなジョークを飛ばしたり、ヌードルでいっぱいのプールに患者と入って笑いあうのです。

 それで病が治るわけではありません。ただ、患者はみな笑顔を取り戻し、「楽しい」「ありがとう」というのです。

 そして、『助を求めている人を助けられる人間になりたい』というひたむきな思いと、人と人との交流の先にあるものを信じて自分の医学の道を進んでいこうと決意するのです。患者たちの笑顔を力にしながら...。

 映画を観ながら、自分の仕事にも思いを馳せます。何のため、誰のためにしているのか?私はアダムスの不器用な生き方にはらはらしながらも、そのシンプルで純粋な思いにエネルギーをもらっているのです。

 非常勤カウンセラー 増岡考子