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2020.01.07|最終更新日:2020.08.10|

【開催報告】花田太平助教の「グローバル・スタディーズ入門B」で特別講義を実施

 2019年11月6日(水)と12月18日(水)の2回にわたり、花田太平外国語学部助教の「グローバル・スタディーズ入門B」の授業で特別講義を開催しました。講師には、金菱清東北学院大学教養学部教授、命の語りべである髙橋匡美氏のお二方をお迎えしました。

初回の「震災の記憶を巡って:疑似喪失体験プログラム」は、東日本大震災の当事者で語りべ活動を精力的にされている髙橋さんからお話を伺いながら、聴衆一人ひとりがそれぞれの大切な場所や物、人を書いた紙を破いていき、その作業を通して被災当事者の喪失体験に思いを寄せるものでした。受講学生に加え、一般からの参加もあった200名余りの聴衆の中からはすすり泣きも聞かれました。
 2回目の金菱先生の講義では、前回の疑似喪失体験のリフレクション(振り返り)を行いながら、最新の災害社会学の知見をお話しいただきました。

担当の花田先生からのコメント:
「千葉県では昨年台風15号・19号および大雨被害があり、また近年、首都直下地震の可能性が強調されるなど、学生たちにとって自然災害は身近なものとなりました。一方で2021年に10年の節目を迎えようとしている東日本大震災の記憶は、私たちの中で風化し始めています。「防災」が強調される傾向にある災害教育でありますが、災後にさまざまな形の喪失とどうやってともに生きていくかについては、あまり教えられることはありません。自然災害に限らず、喪失や悲嘆は普遍的で人間的なテーマです。今回学生には、時間が経った今だからこそ言葉にできる当事者の気持ちを共有することを通じて、「他人事」を「我が事」に翻訳するという実践的な経験をしてもらいました。これまで単に情報としてあったものが、より人間的な意味をもってつかみ直されることによって、学生の人格的な魅力や成長につながれば幸いです」

受講学生のコメント:
「正直、今回疑似喪失体験プログラムを受けるまで東日本大震災のことを思い出す機会はほとんどありませんでした。...大切な人や物を失う悲しみ、(髙橋さんのように)もし自分が大切な人の第一発見者になってしまったら、そう思うと私は涙が止まりませんでした。私はこの体験を通して大切なもの、思い出や将来の夢は何なのか、そしてそれらの大切さを再確認することができました。私にとってこの体験プログラムは忘れられない大切な思い出になりました。この体験プログラムをもっとたくさんの人に知ってほしいし、体験してほしいと思いました。」(一年生)

「命の語りべの髙橋匡美さんは、大震災と向き合うのに三年もの年月がかかったと言っていた。最初は、大切な物や人を書いた紙を破っても私は動じないと思っていた。しかし、最後の紙を破る時、その人が本当にいなくなってしまうような気持ちになり、涙が止まらなかった。大切な人を失うとはこういうことなのかと実感したと同時に、実際に被害にあった人々はこの体験以上に辛い思いをしたことがわかった。」(二年生)

「地震だけに関わらず、多くの自然災害は人間に『明日は当たり前じゃない』と伝えているようだ。『自分の大切なものを大切にしろ』とメッセージを送っているようだ。本講義を通じて、私は大切なものを自分で守ろうと思った。」(二年生)

「髙橋さんを含め、残された遺族の喪失感、悲しみはどれほどのものだろうか。講演会を終えて、私は真っ先に母に電話をかけた。『急にどうしたの?』その言葉が嬉しかった。」(一年生)

「(これまで)東日本大震災を他人事のように遠い存在と考えていた。けれども、今回の講義で自分の考えが変わった。『大震災』には、被災者もいればテレビ越しでしか見たことがなかった人もいる。でも、失うということは、いつどのように誰の身に起こるかわからない。だからこそ、本当に今を大切に生きたい。」(一年生)

講義の様子1
講義の様子2