お知らせ
【実施報告】経済学部「ファミリービジネス実務演習」を実施
2022年8月30日~9月1日、「ファミリービジネス実務演習」(下田健人教授・近藤明人教授)が開講されました。
経済学部の3・4年の23名の学生が受講しました。「ファミリービジネス」(同族経営)の事業承継における、経営者の正しい向き合い方および後継者としての正しいあり方を、本学関係者で実際に家業を承継されたゲスト講師をお招きし、3日間にわたって実践的に学ぼうという演習です。
初日はオリエンテーションの後、学生たちがグループに分かれて、この演習で考察、研究したいテーマを話し合い、あらかじめ発表しておく時間が設けられました。
学生からは、会社の経営権を後継者に引き継ぐ際に想定される問題点、永続企業にするために留意しておきたい後継者の心構えなどのテーマが出されました。
1日目は、本大学出身の長谷享治氏(長谷虎紡績株式会社 代表取締役)のお話を伺いました。
2日目は、麗澤高等学校出身の杉本和歌子氏(有限会社杉本清味堂 代表取締役)のご登壇でした。
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福井県大野市の400年以上の歴史を持つ城下町に佇む一軒の米菓屋です。昭和23年の創業以来、米菓一筋に自社製造を続けています。終戦後から試行錯誤し、あられ屋さんになりました。
その後、米の風味や食感を活かした団子店として地元で少しずつ認知されました。2代目の父親からバトンを受け継いだのは、2011年のことです。店のキーマンであった職人さんの急死などの試練を乗り越えて、従業員の8割が女性ということから、「女性が働きやすい職場環境づくり」、「400年の伝統を守りつつ新たなブランディングの構築、時流にあった商品開発」に傾注してきました。
女性経営者は、家事から育児、介護までビジネスの傍らで果たす役割が多く、さまざまな立場のバランスを保つ葛藤があります。 杉本和歌子氏
そして3日目は、麗澤高等学校出身の野本廣之氏(本学園常務理事 元・株式会社東洋食彩代表取締役)からのお話でした。
野本廣之氏
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競争のない環境で発展した業界もグローバル化と共に競争のない業界はなくなり、持続可能な経営方法は変わりつつあります。
「ファミリー」という言葉の意義をもう1度見直すべき時期なのではないか、血縁ではなく理念の継承ができれば良いのではと考えます。永続企業の特徴は「本業を離れず本業を変える」。周りの永続する経営者を見ていて、考え方の共通点がいくつかあります。自分の生き方全てが、人を呼び込むか呼び込まないか、決まっていきます。どんなことも人への不満にせず、自分の不満に向き合い、気がついたことを反省して直していくことが肝要です。
掃除をする、挨拶をする、寄付をする、ボランティアなど、大事なアクションはたくさんありますが、「どういう気持ちでやるか」「やる行為は同じでどういう心でやるか大きく人生は変わる」と実感しています。
最後に学生のグループ発表がありました。
「目に見える事業だけでなく、目に見えない品性の継承も不可欠である」という視点から、「人づくりに始まり、人づくりで終わる」道経一体の理念がどのように生かされるか、との考察が印象的でした。
発表後、下田先生、近藤先生からの講評や質問に対して、グループごとに改めて話し合い、考察を深めて補足の発表をしました。
講師のお一人から「先生と学生のアットホームなキャッチボール、その後のフィードバックの早さから、講義や研究を通じて信頼関係ができていることを感じました。麗澤の少人数教育の良さが生かされていますね」とのコメントをいただきました。

3日間の演習を終え、参加した学生の感想が寄せられました。一部をご紹介します。
■大学卒業後、すぐに後継者として家業の修行に入ります。現在のオーナーである親との関係のあり方が不安でしたが、事業承継の本質の柱をしっかりと学べて、意欲的な気持ちになりました。もう一つの将来の不安であるファミリービジネスのイノベーションへの挑戦についても有益な知見を得られて参考になりました。
■野本さんの『一流の人はどんな小さな約束でも守る。皆が皆、記憶力が抜群なのではなく、忘れない努力を常にしているからである』という言葉が響きました。