学生生活学生相談室
学生相談室コラム Vol.52 - 推薦図書『体は全部知っている』
『体は全部知っている』吉本ばなな 著,文藝春秋 (2000.9)
図書館の地下で「体は全部知っている」(吉本ばなな著)背表紙のタイトルが光って見えた。連休中に読む本を探していた時だった。この本には13編の物語がおさめられていて、どの話にも、近くにいそうな誰か、または私の姿が登場しているような身近さがある。たとえば家族がそれぞれ見舞う祖母の入院。苦しい恋愛。幼馴染の急な病気。旅仲間との思い出、ちょっと変わった家族の在り様など。
当たり前になりすぎて、今さら疑問を持つことさえ難しくなっている日常の中、"これでいいんだ。いいはず" "みんなもがんばっているのだから。(=ここで弱音を吐いたらいけない×××)" などと、自分で自分に言い聞かせながら、がまんをのみこんでいたりはしないだろうか。"努力して続けなければならない"と思い込んで、ちょっと一休みもできなくなってはいないだろうか。
身体の声が私たちに素直に届いたとしたら、無理を少し横に置いてみるのもいいだろう。「体は全部知っている」のだから、身体の声に耳を傾けてみたら「自分の中の深いところに押し殺してきた気持ちをわかるということが、何よりも大切なんだなあ」と体とこころがつながることもある。また「記憶の奥底から、何か役に立つことや懐かしくて元気が出ることが浮かび上がってくることがある」それこそ自前の処方箋だ。身体の声に耳を傾けてみたら、"私がしたかったのはこれだ" と自然に私の決断が導き出され、私が整っていくだろう。
ストレスとは上手な付き合いが必要だ。だけど、心配しすぎることはない。なんといっても「体は全部知っている」のだから。身体が受け取ったストレスから試行錯誤した先に、視界が広がったり、気持ちが整ったり、こころ元気になるって、ありなんです。
木曜日勤務のカウンセラー 高石美代子
図書館での請求記号は 913.6/Y913a です。地下1階に配架されていますので。ご興味のある方はぜひ。