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2018.12.06|最終更新日:2020.07.24|

【開催報告】山下美樹ゼミ 第8回ヒューマンライブラリー

第8回目(平成30年12月1日(土)15:00~18:00)のヒューマンライブラリーは、柏の葉サイエンスエデュケーションラボと協働で、柏のまちづくりを推進するカフェYOL Cafe Froschにて、「困難の克服と科学」というテーマで開催しました。当日は、柏の葉サイエンスエデュケーションラボが主催する、Science Saturday in 柏2018のイベントの一つとして、ヒューマンライブラリーを開催しました。

ヒューマンライブラリーとは、2000年にデンマークで発祥した対話型のイベントで、様々な価値観、経験を持つ人が「生きている本」(語り手)になり人生体験を語ります。読者(聴き手)は自分自身についても考える機会を得ることができ、偏見の低減や多様性に開かれた社会の実現が期待できる取り組みです。

今回、本役としてはじめて本学のゼミ生が本役として語りました。千葉大学の学生さん、茨城県職員の獣医師の方にも登場していただき、和やかな語りの時間を楽しみました。

 

以下、本役(語り手)の方々のタイトルとあらすじです。

1. 理科教員を目指す大学生 飯田拓郎(いいだ たくろう)さん(千葉大学教育学部4年)『三途の河は長かった

私は「てらこやちば」という団体で、千葉市の地域の方、特に子ども・大学生と一緒に、共育・居場所作りの活動を行なっている。団体の活動や大学生活で順風満帆な日々を過ごしていた昨年9月のとある日、運転中の急性失神により単独事故を起こし、今生きていることが不思議なぐらいの怪我をした。三途の河に飛び込んだこの不幸な経験は、誰の身にも起こってほしくないこと。ただ、この出来事から一生を彩ってくれるような沢山の奇跡に出会った。それを誰かの人生のプラス要素にできないかなぁ…という想いを語る。

2. 難病と闘いながら働く獣医師 近藤 菜津紀(こんどう なつき)さん

(茨城県職員 獣医師)『獣医師として、難病と向き合い生きる

中学生の頃インフルエンザに罹って以来途切れることのない症状の数々。17年間診断がつかなかった「わかりにくい病気マスター」の私が解説する、脳脊髄液減少症と線維筋痛症。それでも獣医師になりたくて身につけた生活術や獣医師としての仕事、病気と育児など病気と共に生きる。

3. 海外旅行先での不幸な経験から断捨離に目覚める 田中一世(たなか ひでつぐ)さん

(麗澤大学経済学部4年)『旅行で荷物を盗まれて―断捨離』

大学3年の夏、友人とヨーロッパ周遊を行った際に荷物を盗まれてしまった。帰国時の持ち物は財布とパスポートと携帯のみ。帰国後、盗難にあったショックから立ち直るために「盗まれた」のではなく「捨てたのだ」と考えるようにした。そんなとき「断捨離」という言葉に出会い身の回りの物を捨てた。今では囚われから自由になり、とても快適な生活を送っている。 断捨離×旅・服・体重・食事・家具・科学。

写真:向かって左から、飯田拓郎さん、近藤菜津紀さん、田中一世さん

 

3名の本役の方々からは、「自分の経験が誰かの役に立つ可能性が発見できてよかったです」、「自分が考えていることが整理されたり、意外なことを質問されて、考えてこなかったことを考えることができました」、「自分が思っていたよりも、好意的に職業や病気や生き方を見ていただいたり、興味を持っていただけてうれしかったです」などがありました。

次に11名の読者(聞き手)の方々からは、「生死の境をさまよった大学生の話しのなかで、人の生きる意味とは、人と繋がること」という言葉が心に響きました」、「人を本として、というのがどんな感じになるのかよく分からなくて、正直不安でしたが、その人と言葉を交えながらじっくり話を聞くことができてとても楽しかったです」、「内容がかなりインパクトのあるもので、自分の今までの生活と比較できないものばかりでした。人生の中で大きな困難にぶつかった時に、それぞれの解決策が非常に面白かったです」、「初めてでしたが、面白い企画だと思いました。初対面の人が集まっても、「本と読み手」という「役割を与える」ことで、盛り上がる科学の観点から、いろいろできそうだと想像が膨らんだ」、「最近、自分の分野の人としか話していないので、視野が狭くなってしまったなか、いろいろな分野の考えの人と触れることができてよかったです」、「一人の人間の人生について、ディープに聞くことのできる機会はそうないので、いろいろな話が聞けて楽しかったです」などの意見がありました。一般的に本役の語り手ほとんどが、特に、社会に対して発信したい体験、気持ちを持つ方が、また本として語りたいという感想を残されています。

 

本役を担当したゼミ長の田中一世さんは、今までコーディネーター側であったが今回は語り手側で参加してみて、その大変さを思い知ったと語ります。「最初は一方的に話す予定で、プレゼンテーションを作成していきました。しかし、ヒューマンライブラリーは、一方的に話すよりも対話式が向いていると感じました。2回目のセッションでは、話しながら読者の興味があるところをより掘り下げて話したところ盛り上がりました。本役の控室はやはりあった方が良いと思いました。休憩を取ってもその場に読者がいることで、会話が始まり休めないからです。YOL Cafe Froschでは、とてもいい距離感で落ち着いて話ができました。店の雰囲気が良かったです。」

これまでさまざまな場所(麗澤大学教室内、麗澤大学生涯教育プラザROCK麗澤大学はなみずきカフェ新宿アイランドタワーのオフィスビル柏市施設のパレット柏柏市のハウディモールでの路上開催)でヒューマンライブラリーを実施してきましたが、今回の収穫は、こじんまりした温かい地域密着型のYOL Cafe Froschで、心地よい居場所を参加者と共創できたことです。ヒューマンライブラリーは「開催場所と一人ひとりの役割」が大きく影響します。読者(聞き手)の方の感想にもあるように、「初対面の人が集まっても、本と読み手という役割を与えることで盛り上がる」という点に、ヒューマンライブラリーは、全くの初対面でも人と人の間の壁を低くし、繋げる効果があり、街づくりの効果的手法であることが確認できました。

最後にヒューマンライブラリー開催において、ご支援くださりました皆様、団体の方々に深く感謝申し上げます。

(経済学部経済学科4年 田中一世、学校教育研究科・経済学部准教授 山下美樹)