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【開催報告】静岡大学教授の楊海英氏による講演

平成23年10月20日、平成23年度比文研セミナー『文明シリーズ』の第4回目が、麗澤大学生涯教育プラザにて開催されました。静岡大学の教授でいらっしゃる楊海英氏をお招きし、「内モンゴルからみた文明」をテーマに講演が行われ、約60名の参加者が熱心に聴講しました。

歴史は勝者の立場から書かれるのが常ですが、それが必ずしも全ての事実を語っているとは限りません。普段何気なく目にしている世界地図も、実は常識という固定観念としての歴史の具現であり、この地図を逆さにするだけでも世界は随分と変わって見えるものです。今回の講演ではこのような逆の立場から見た文明を中心に、主にモンゴルと中国、また日本との関係が語られました。

主に漢字を媒介にした中国文化圏では、定住をせず、農耕も行わない遊牧民族を常に「野蛮」と称してきました。しかし、その中国文化の象徴的なアイコンである万里の長城を境に、実は土地と気候が随分と違うという事実が存在し、これらの異なった自然環境にそれぞれの民族が順応し、適合した生活スタイルを見出し、生活を営んだだけというのが真相だそうです。事実、万里の長城の「外の世界」では遊牧が最も適した生活スタイルであったわけですが、前述したようにこのような文化を「野蛮」と一蹴した結果、遊牧文明と農耕文明は衝突を繰り返すことになり、双方相容れない関係に成り果て今に至ったという歴史的経緯についての解説がありました。

また、日本ではあまり知らされていないモンゴルの日本事情の紹介もありました。普段の生活では相撲くらいしか日本との接点がないように思えるモンゴルですが、実は大変な親日国であり、満州国の存在にその所以を探すことができるそうです。植民地政策の一環ではありながら、一方的な駆逐ばかりだった中国とは違う、文化的なアプローチを試みた日本は現在でもモンゴルに近代文明をもたらしたと国として高く評価されているようです。

現在は中華人民共和国の一部として存在する内モンゴルと、またその構成員の一部である少数民族として分類されている内モンゴルのモンゴル人ですが、近年このような中国内の少数民族自治区で頻繁に起こっている騒動の背景を正しく把握するには、以上のように事実としての歴史的経緯について深みのある理解が必要であることを改めて認識させられた講演でありました。

(麗澤大学 大学院生 記)

講師の楊海英先生
講師の楊海英先生
本日は内モンゴルをテーマに
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地図を逆さにしてみると...
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遊牧文明について
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質疑応答①
質疑応答①
質疑応答②
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