学生生活学生相談室

コラム
2020.09.08

学生相談室コラムVol.11 - マンガ限定ビブリオバトル③/ 2017年に発行部数7000万部突破のダーク・ファンタジー

このコラムVol.11は、学生相談室夏休みイベント「マンガ限定ビブリオバトル」参加作で、近日開始のアンケートの対象です。

 おススメマンガ:『鋼の錬金術師(はがねのれんきんじゅつし)』荒川弘 著,スクウェア・エニックス

 マンガというものは、ただ単にストーリーの面白さを楽しむだけの娯楽本ではありません。それは時に紙面を介して、私たちに「本当に大切なことは何か」を訴えかけて教える、言わば人生の糧ともなり得る本です。実際に私も、今回紹介する本書からたくさんのことを知り、たくさんのことを学びました。


全ては、この言葉が物語っているのではないかと思います。

「痛みを伴わない教訓には意義がない」

「人は何かの犠牲なしに何も得ることなどできないのだから」


物質の構成を変異させて別のものへと作り替える魔法のような技......それが【錬金術】。


 ストーリーは、主人公である錬金術師エドワード・エルリックが弟のアルフォンスと共に、死んでしまった母を生き返らせるために錬金術の禁忌【人体錬成】を試みてしまったことから始まります。その結果錬成は失敗し、禁忌を犯した代償として、エドワードは自らの左足を、アルフォンスは身体の全てを失いました。物語の冒頭で語られたこの言葉は一見、罪を犯した兄弟に罰を与えるような、残酷な印象を受けます。しかし、物語の最後ではこの言葉に続きがあるのです。


「しかしそれを乗り越え自分のものにした時......

「人は何にも代えがたい鋼の心を手に入れるだろう」

 この世には、完全な存在なんてありません。誰もが皆、何かしらの弱い部分やもろい部分、醜い部分を抱えて生きています。

 それはこの物語の主人公も同じです。過ちを起こしたり、残酷な現実に打ちのめされたり、悩み苦しんだりして、時には立ち止まってしまいそうになるときもあります。しかし、正しいと思うことにまっすぐだからこそ、自分の心に誓った思いを忘れないからこそ、いつだって仲間が支えてくれる。もしも最強の主人公が周りを助けるような、そんな独善的な展開であったらここまでこの物語に引き込まれることはなかったでしょう。

 このマンガでは、主人公を支える周りの人々も重要な役割を持っています。登場人物一人一人に焦点が当てられることで、個々の人々の思いに共感できるのもこのマンガの良さです。


 また、ストーリーの中で人体錬成や戦争に対する倫理観に関しても触れていて、延命治療や遺伝子操作が問題となっている現代にも繋がるところが数多くあり、このマンガのテーマの一つである「生命の在り方」についても、深く考えさせられる場面がありました。

 このように、このマンガにはただのフィクションだけではない、現代を生きる私たちにも通じる部分が数多くあります。くじけそうになってしまった時や落ち込んでしまった時にこそ、読んでほしい作品です。きっとあなたも、読んだ後には再び勇気を持って前へ進めるようになっているでしょう。『鋼の錬金術師』は、胸を張ってそう言えるマンガです。

 ......と、自分で読み返してみれば随分と堅苦しいことばかり書いてしまいましたが、最後にこれだけは言わせてください。


 皆さんもぜひこの機会に、『鋼の錬金術師』を見てみてください!


 この先の展開が読めずにドキドキするストーリーはもちろんですが、躍動感あふれるアクションシーンやたまに緊張を忘れて爆笑してしまうギャグシーン、個性豊かなキャラクターたち、コミカルなおまけの四コママンガなど、どこもかしこも見逃せない見所ばかりです!

 
 一度読めば、手放せなくなってしまうこと間違いなしの「不朽の名作」です!

経済学部 S.R.さん