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教育・研究
2022.01.31

【第3回実施報告】国際学部「グローバル基礎演習」にて 本学卒業生である山路祐一様による特別講義を実施

 国際学部グローバルビジネス専攻の「グローバルファイナンス・AIコース」と「グローバル経営コース」では、2021年度後期に開講されている「グローバル基礎演習」の授業で、財務、ESG、CSRといった異なる視点について、まず理論を学び、その上で、それぞれの視点から実際の企業を取り上げることで、企業間の比較評価などの演習を行っています。昨今は「ESG投資」に代表されるように、企業のサステナビリティに対するステークホルダーの評価が厳しくなっています。こうした視点を理論と実務の両面から学ぶことで、サステナビリティに対し、全体的な理解を得ることを目指しています。

 本講義は、理論と実例の講義、グループワークによる事例分析、ディスカッションとグループ報告を中心に進められていますが、これに加え、実務の現場に対してさらに理解を深めるため、こうした分野で活躍されている実務家の方々をお招きして、特別講義を開催しています。2021年12月には、製造業でサステナビリティ業務に従事するほか、任意団体サステナブルコミュニティの発起人かつ管理人である山路祐一様にお越しいただき、ご自身のキャリアと、そこに至るまでの道筋、さらには現在の業務内容などを詳しくお話しいただきました。 

 山路様は麗澤大学国際経済学部の高 巖ゼミ出身で、現在は製造業にてサステナビリティの専門家としてお仕事をされていますが、こうしたキャリアの出発点は本学での学びにあったそうです。 山路様は、高 巖ゼミでゼミ長を努められ、企業不祥事やコンプライアンスなどを中心に学修されました。また在学中に、大手監査法人系のコンサルティング会社でCSR実務に関わるインターンシップを経験し、そこで、ご自身が大学で勉強していることを、本業の仕事にされている方々と出会いました。その影響から、大学で学んだ知識・経験の延長線上で、将来のキャリアを形成したいと考えるようになったそうです。

 まず、ゼミで学んだ企業倫理や、インターン先での経験を活かし、ディスクロージャーを専門にする会社に就職し、CSR報告書の作成支援業務に従事されました。その後、IR支援会社への転職を経て、現職に至ります。これまでのキャリアでは、一貫して企業におけるサステナビリティ活動と深く関わっておられますが、その背景には、社会における倫理観の変化と、今後の展望があると仰います。これについて、具体例を交えて解説してくださいました。

 A社とB社が、スマホの製造販売をしているとします。同じ品質であるにもかかわらず、A社のスマホの方が、B社のスマホより安いとすれば、多くの人がA社のスマホを選ぶでしょう。しかし、A社のスマホは安いけれど製造過程で違法労働の疑いがあり、他方でB社のスマホは高いけど違法労働の疑いがないとすれば、結果は違ってくるかもしれません。現代では、このように、多くの人々が製品の製造過程において倫理性を求めるようになっています。 こうした状況を背景に、企業にも、様々な点でサステナブルなビジネスが求められています。山路様も現在、サステナビリティ業務を通じて、会社のビジネスを支えていらっしゃいます。普段の業務内容は「サステナビリティ戦略会議の運営」「統合報告書・ESGウェブサイトの制作」「ESG評価機関対応」「気候変動情報開示対応」「人権デューデリジェンスの仕組み構築」「責任ある鉱物調達の推進」「顧客からのESG監査対応」など多岐にわたります。

  •  また、サステナビリティに関する知見を深めるため、会社の枠を超えた活動も展開されており、様々な企業・業種・職種において、サステナビリティに関わる人々をつなげるため、SNS上でコミュニティを立ち上げられました。現在では、メンバーが100名を超えています。今回の3回にわたる特別講義も、このコミュニティを通じて特別講師の方々の協力を得ることができ、実現する運びとなりました。

     最後に、これから社会に出ていく学生に向けて「答えの出ない問いかけ」を考えることの大事さを強調されました。生命倫理・環境倫理・情報倫理など、新たなテクノロジーに関わる分野では、社会が明確な善悪の判断基準を提示することができていません。こうした問題について、学生に問を投げかけるなかで、自分の頭で理論的な答えを出すことの重要性について伝えていただきました。山路様のお話を聞いて、表情を引き締めた学生も少なくなかったように思います。

  • 山路様プロフィール写真 (1).jpg山路 祐一 様

講義を受けた学生からは、次のようなコメントが寄せられました。

「本日は特別講師の山路さんから、貴重なお話を伺うことができました。私は今まで、この授業を通して、いくつかの特別講義を受けましたが、そのなかでも、山路さんは私たちの直接の先輩ということもあり、とてもリアルに話を聞くことができました。特に、今回聞いた話のなかでも『仕事をするなら、自分の軸を持ち、しっかり稼がなくてはならない』とおっしゃっていたことが印象に残り、これを心に留めておききたいと思いました。」(千葉陽向)

「就活に向けて、具体的な道が見えた気がする。自分の興味のあることを仕事にし、大学で学んだことをそのまま仕事に生かすこと。自分の市場価値を上げるのは簡単ではないが、とても大切なことだと感じた。」(細谷アン)

「講義を通じて、人生の価値観について考えることができた。現在、私は大学に通いながらも、『自分がしなければならないこと』と『自分がしたいこと』の間に距離を感じていた。これからは何をすべきか、しっかり考えなければならないと気づいた。私は何が好きなのか。それを仕事にしたらどんな人生を生きるのか。こうしたことを考えながら、私自身の価値観を築いていく必要がある。このような観点で、自分を振り返ってみると、自分のやりたい仕事に向けて、今の自分に不足している点があると感じられた。これからは、経験と知識を積むことで、主体的に自分の人生を生きていきたいと思った。」(韓侑里)

「山路様の特別講義を聴講し、これからの長い人生をどうやって生きるべきか、人生設計やキャリアプランについて、この機会にお話を伺うことができ、大変参考になりました。」(細谷一輝)