学生生活学生相談室
学生相談室コラム Vol.37 - 推薦図書『わたしが障害者じゃなくなる日』
『わたしが障害者じゃなくなる日:難病で動けなくてもふつうに生きられる世の中のつくりかた』
海老原宏美 著 / 旬報社
私が海老原宏美さんを知ったのは、2018年。映画「こんな夜更けにバナナかよ」(前田哲 監督/2018年12月公開)の原作者、渡辺一史さんの著書『なぜ人と人は支え合うのか』(ちくまライブラリー新書)を読んだときでした。バイタリティーあふれ使命感をもって生きている方だなという印象を持ちました。
その数年後、2020年コロナ禍のまっただ中、ブックカバーチャレンジというFacebook内の企画で、『なぜ人と人は支え合うのか』を紹介したところ、友人R子さんに「『わたしが障害者じゃなくなる日』も、ぜひ読んでみて」と勧められたのが、海老原さんとの2度目の出会いとなりました。
海老原さんのメッセージは率直で、この本の扉を開いてすぐから、私の心にビンビン響いてきました。文章の1つ1つから、海老原さんの声が聞こえるかのように。それだけ、誰もが生きやすい社会を作りたいという思いを強く持った方だからでしょう。障害者とは?人権とは?平等って?誰だって生きやすい社会って...。わかりやすく、そしてそれぞれが、自ら考えて行動できるように呼び掛けてくれています。
私は、海老原さんとの出会いによって(本を通じてですが)、多様性が大事、お互いに助け合いましょうと言っている自分の人間観がいかに狭いものであるかに気づくことができ、微力ではあるけれど、病気になっても、障害とともに生きることになっても、年をとっても、生きやすい社会になるよう助け合える人でありたい、そしてその仲間を増やしたいという思いをより強くすることになりました。
新型コロナの影響で大きく変わってしまった社会で、何を大事にして、どう生きていったらよいか、不安の多い今だからこそ、みなさんに読んでほしい1冊です。元気をもらえます。
*2021年12月24日、天に召された海老原宏美さんの志を多くの人に知っていただきたく紹介させていただきました。
<海老原宏美さんのプロフィール> (映画「風は生きよという」HPより)
1977年神奈川県出身。生後1年半で脊髄性筋萎縮症と確定診断を受ける。小学校から大学まで地域の学校に進学し、2001年の韓国縦断野宿旅で障害が重度化。02年より人工呼吸器を使いはじめる。01年より東京都東大和市で自立生活を開始。自立生活センター東大和で障害者の地域生活に関わる権利擁護・相談支援活動等をはじめる。09年、人工呼吸器ユーザーの地域生活支援のために仲間と「呼ネット」を設立。
CDS(Center for Disabled Students) 半田タユ美