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教育・研究
2024.11.08

【学生の活躍】第3回「核なき未来」オピニオン賞の最終選考対象者に選ばれました。

 長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)が主催する第3回「核なき未来」オピニオン賞(U30の部)の最終選考に、自主企画ゼミナール※「戦争の記憶とサステナビリティ」に所属する本学外国語学部4年次生の阿部 真凜さん、立花 彩乃さん、3年次生の川津 せりさん、羽生 千夏さん、松本 桜季さんの論文が選ばれました。
 川津さん、松本さんは昨年度に続いて2年連続の選出です。

※自主企画ゼミナールとは、学生が学びたいテーマを見つけ、 学生が自ら指導を受ける教員を選び、 何をどのように学習していくかについて、 該当教員の助言を受けながら決定し、 学習計画を立て、 その計画に従って進めていくゼミナール制度です。

IMG_7990 (1).jpg(左から:立花さん、川津さん、松本さん、羽生さん、阿部さん)

 自主企画ゼミナール「戦争の記憶とサステナビリティ」は、外国語学部の一年次科目「グローバルスタディーズ入門 B」(担当花田太平准教授)で学んだ近現代史に関
心をもった学生が立ち上げ、これまで日本の戦争に関する跡地や資料館を訪れるフィールド調査を実施してきました。
 フィールド調査を通して、これからの世代に戦争を伝えていくことの大切さやその意味を理解すること、戦争を深く知ることを目的としています。
また、日本からの視点だけでなく、他の当事者国(欧米諸国、ヨーロッパ諸国、アジア諸国など)からの視点も理解し、対話的な歴史学修のあり方も探求してきました。

 「核なき未来」オピニオン賞は、若い世代に広く核兵器問題の重要性を訴えるとともに、平和な国際社会の実現に貢献できる人材の育成を図ることを目的とし、「核なき未来」に関するオピニオンを募集するものです。第3回目となる今年度のサブテーマは「核兵器に頼る国のリーダーへ」でした。

 審査の結果、見事最終選考に残った5名の皆さんの論文テーマは以下の通りです。
 5名の論文は、こちらのURLの長崎大学核兵器廃絶研究センターのHPに公開されています。

受賞者 論文タイトル
阿部 真凜

オッペンハイマーから日本のリーダー達へ排他的な核兵器議論への批判

立花 彩乃

核兵器をお守りだと主張するリーダーの皆さんへ

川津 せり

「核なき未来」への考察体験的学びから考える、核の記憶継承と平和のバトン

羽生 千夏

今を生きる日本政治家へ

松本 桜季

わたしの平和とあなたの平和と

受賞者コメント

阿部 真凛さん

映画「オッペンハイマー」の大ヒットの影響もあり、今世界中で「核兵器」に対する注目が集まっています。そんな中でも、依然として核兵器廃絶に対し明確なムーブメントを起こさないばかりか、核兵器配備の議論を政治家レベルのみで議論してしまうような日本政府に対して、一般市民の目線から疑問を投げかける論文を執筆しました。
戦後オッペンハイマーは、彼自身の手で作り上げた核兵器に対して、次第に恐怖と反省の念を抱くようになっていきました。しかし彼の思いはついに届かず、現在各国は核兵器を抑止力として所有し、あまつさえ脅しの道具として利用しています。そのため今回は、私は1人の大学生として微力ながらも彼が世界や日本に対して遺したメッセージを継承する役割を担いたいと思い、ありのままの言葉で本論文を書かせていただきました。少しでも彼が伝えたかったメッセージが多くの人に知れ渡り、現状に対して疑問を持っていただければ幸いです。

立花 彩乃 さん

怖くて難しいイメージを持っておりこれまで「戦争」という話題を避けていましたが、友人の紹介で今年から自主企画ゼミナール「戦争の記憶とサステナビリティ」に入りました。
広島でのフィールド調査の経験や、自然に戦争や平和に関する対話ができる環境に身を置くことで、自分1人で考えているだけでは浮かばない発想が出てきたり、新しい考え方を知ることができました。今回の論文は、自主企画ゼミナール1年目の私だからこそ書ける内容を取り上げたいと思い、ありふれた日常がいかに幸せに溢れているか、このかけがえのない日々を一瞬で奪ってしまうのが核兵器であることを訴えました。絵本のように読みやすい論調で執筆しましたので、私のようにこれまで「戦争」について触れる機会が少なかった方にも読んでいただきたいと思っています。

川津 せりさん

昨年6月に長崎県、今年8月には広島県で実施したフィールド調査で二人の被爆体験者の方からお話を聞いてきました。どちらの方も伝え方は違っていても「平和を逃さないで」「この体験を話しておかなければならない」という言葉を何度もくり返し仰っていることが印象に残りました。辛くて痛い想いをお二人が生の声で伝えてくださったことで、次世代へ戦争の記憶をつなぐためのバトンを渡されたと感じ、「記憶の継承」を論文テーマとして選びました。教科書で学ぶだけではなく、フィールドワークや対話を通じた体験型の平和学習は、戦争や核兵器を自分事化し、自分の言葉で語ることできるようになると実体験で学びました。このことから、論文では、「武力」ではなく「自己の語り」で核や戦争について他者と対話することこそが本当の抑止力であり、政治でもとり入れて欲しいということを訴えました。

羽生 千夏さん

この自主企画ゼミナールは、戦争についての平和活動を持続可能にするという研究テーマを掲げ活動しています。一見、重いテーマで堅苦しいイメージを持たれると思いますが、毎学期実際に足を運ぶというフィールドワークを行い、授業形態の枠に当てはまらない自分達らしい学びが特徴です。そこで基盤となる対話的手法は、年齢を問わず参加者全員に自然と対等な立場をもたらします。この論文では、対話という交流が平和学習における要となり、問いを投げかけ他人事にしない実践が必要であると主張しました。歯止めがきかなくなってしまった戦争、日本の未来を背負う一人として今後も、人と人のつながりに向き合っていきたいと思っています。

松本 桜季さん

今回は「核保有国のリーダー、核の傘下にいるリーダーへ」というエッセイテーマのもと、自分たちが歩んできた約二年間の全ての活動を一つひとつ丁寧にふり返りながら、その後の未来の自分たち、世代へと託すように、紡ぐようにして書いたエッセイでした。戦後80年を目前に控え、原爆投下という「平和」の正反対をいく行為を被った国があるのにもかかわらず、今もなお世界では戦争が勃発しています。私は、こうした自主企画ゼミナールの活動やフィールド調査を通して自分が置かれている状況がどれだけ恵まれているのかと感謝している部分がある反面、自分には何ができるのだろうといつも考えるようになりました。
日本原水爆被害者団体協議会のノーベル平和賞受賞や、私たちのエッセイをきっかけに、今いちど世代を超えて同じ立場で、「平和」「ヒロシマ・ナガサキ」「被爆者」についてみんなで考えることができれば幸いです。

担当教員 花田准教授のコメント

このたび2024年のノーベル平和賞が、被爆の当事者団体である日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与されることが決まりました。これまで地道に被爆当事者の語りを聞くために、広島へ、長崎へとフィールドワークを重ねてきた学生たちにとっても嬉しい知らせとなりました。戦後80年を眼前に、映画『オッペンハイマー』(C.ノーラン監督)への反響にもみられる通り、賛否を含んだ核問題と原爆被害への関心が、グローバルな規模で高まっています。参加学生たちは、日本は唯一の戦争被爆国として、この世界の声に応答する役割を期待されていると感じ、自ら活動を立ち上げ、対話と探究を深めてきました。今後の活躍を楽しみにしています。

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