『柚木さんちの四兄弟。』藤沢志月 著　／　小学館

　この漫画のタイトルになっている"柚木（ゆずき）家"は、長男の隼（はやと）、次男の尊（みこと）、三男の湊（みなと）、四男の岳（がくと）、の４人ファミリーです。両親は既に亡くなっています。すれ違いを経験しながらも互いを思い合い、力強くも精一杯日々を送っていく様が描かれます。

　24歳の高校教師の隼を筆頭に小学１年の岳まで、４人が時に父母のいる頃の思い出を懐かしがり、時に省みながら、いまを生きていきます。特別なことが起こるわけでもない日常を描いているようで、読み手には「ああ、かつては、自分もそういう気持ちを感じたことがあったな」と感じさせるような"共感"の物語が進行します。

　お向かいのお爺ちゃん虎次郎さんと親友で、ちょっとおませさんな末っ子の岳のセリフ「俺がにいさんを大切にするのは、にいさんが俺を大切にしてきてくれたからだ」や、三男の湊の「"きっと人からいらないって思われてる"って思う自分が、自分なんかいらない世界をつくってるんだ。できない自分でもいいっていう世界も、自分でつくれるよ」など、この漫画には、読者の心に届くような示唆に富んだ言葉が随所に散りばめられています（ちなみに、前者は、岳がすぐ上の兄の湊に言うセリフ、後者は、湊が知り合って間もない友人の天野椿に言うセリフです）。

　この作品は、AT-XやTOKYO MXなどで、2023年10月5日からテレビアニメとして放映開始になりました。原作漫画を読むも良し、アニメを見るもよし。あなたの気持ちに寄り添う言葉が見つかるかもしれません。

　原作漫画は、学生相談室のお隣のこころの休憩室に揃えています。ご興味のある方は、ぜひ読みにきてください。なお、こころの休憩室は、平日の9：00～17：30までオープンしています。