萩野 覚 (HAGINO, Satoru)
職名
教授
学部
経済学部
学科
経済学科

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教員プロフィール

2024年3月まで、内閣府の上席主任研究官と総務省の統計委員会担当室長を務めていました。略歴は、バブルの最盛期の頃、慶応大学の経済学部を卒業して日本銀行に就職し、以来、主に金融や国際経済に関連した統計整備に従事しました。その間、IMF、OECDで、国際的な統計整備プロジェクトにも参画しました。国家公務員になる前は、広島県にある福山大学で4年間教鞭をとり、海外研修を実施するなどして、グローカル人材の育成に取り組みました。本学入学式でも、学長からグローカル人材という言葉が出ました。学生の皆さんを、これまでのコンフォートゾーンから地域経済に、さらには海外に押し出して行きたいと思います。

教職員への一問一答

好きな言葉(座右の銘)を教えてください。
「終生求道」です。人間一生勉強だ、といった意味です。30年ほど前、日本銀行の同期の結婚式の引出物として書をもらい、以来、ずっと壁にかけています(現在は研究室に)。大学で勉強は終わりと思っていたのが、仕事を始めると、ますます勉強することが出てきて、一体いつまで続くのかと悶々としている時に、この書をもらいました。そういうことか、と目から鱗です。私は、経済学の博士号を取りましたが、たった3年前(50歳代)のことです。では、大学の4年間で学ぶことは何か、ということになりますが、それは、一生学べるための学ぶ方法を学ぶのです。
休日の過ごし方や趣味を教えてください。
休日や平日の夜には、卓球の練習をしています。中高以来、今では化石になった日式ペンです(といっても分からないか)。麗澤大学には、卓球部があったと聞いておりますが、今はどうなのでしょう?アウトドアも好きで、大学ではゴルフのサークルに入っており、米国ではツアープロのようにゴルフをしていました。今は、年に一度高い山に、数度低い山に登っています。文化面では、活動が乏しいですが、強いてあげると、中国宮廷ドラマにはまっています。
大学4年間で「学生に訪れてほしい場所」はどこですか?その理由も教えてください。
ツバルという国です。海面上昇で消滅の危機にある国で、SDGを考えるという意義もありますが、それにもまして、「退屈の本質」を感じてほしいからです。私は、10年ほど前、IMFの技術支援でこの国を訪れました。テレビはない、インターネットはほとんど繋がらない、仕事相手は出社してこない、という状況でした。海辺のリゾート、という心持でいられたのは、持ってきた本を読めた3日間くらいで、その後は、やることがなく、「夜が怖い」という精神状況に陥りました。昔の田舎はそんなだったようですが、現在では、得られない体験です。こういう体験をすると、人生に乗り越えるべき壁があり、心を悩ます苦難があることが、とても素晴らしいことと思うようになります(個人差はあるかもしれません)。
大学4年間で「学生に読んでほしい本」は何ですか?その理由も教えてください。
経済の分野では、「資本主義対資本主義」(ミッシェル・アルベール)ですかね。30年ほど前、政府給費留学生として渡仏したのですが、研修先の方が、「米国は世界の異端児だからね。」と言いつつ、この本を勧めてくれました。欧州経済統合は、英米(アングロアメリカン)型ではなく、日独型を目指すべきという主旨の本ですが、「米国にようにしないと遅れている」との認識だった私には、衝撃的な内容でした。詳しい内容は、授業で話します。最近読んだ本では、「木を見る西洋人 森を見る東洋人-思考の違いはいかにして生まれるか 」(リチャード・E.ニスベット)が良いです。訳者は、高校同級の社会心理学者で、同窓会の時に勧められました。後でふれる「協調的幸福感」につながる話です。
専門分野に興味を持ったきっかけは何ですか?
経済統計の仕事は、日本銀行の配属として始めました。ただ、私は元々、物事を概念的・哲学的に考えるのが好きで、人事はそういうところを見ていたのかもしれません。統計は、数字の世界なのですが、統計作成の方法論は、とても概念的・哲学的な議論をするのです。私の高校には、計算がとても苦手な数学の先生がいました。その先生によると、数学=哲学ということでした。他方、国際的なことに関心を持ったのは、国際会議で、英米人が得々と主張しているのを聞いて、大変悔しく思ったからです。OECDの会議で恐々発言してみたところ、米国連邦準備制度理事会の方から、「お前は日本人として初めて発言した。えらい。」と言ってもらい、後々、研修をさせてもらいました。
専門の研究は社会にどう活かされていますか?
日本の経済統計、例えば、GDPや貿易収支といった、経済の実態を把握するために不可欠な統計基盤の改善につながっています。GDP計算の方法論は、2025年に改定される予定ですが、私は、そのための国際的な議論に参画してきました。最近は、幸福度の測定方法の改善にも取り組んでいます。10段階で自分の幸福度を評価してください、との質問に回答してもらい国ごとに平均すると、日本は、OECD加盟国の中で最下位になってしまいます。でも、そんなに不幸でもないですよね?協調的幸福感(家族や仲間と一緒にハッピーになりたいという東洋的な幸福感)が反映されていないのかもしれません。そうしたことをOECDと議論したりもしてもいます。
麗澤大学の好きなところはどこですか?
グローバルなところです。大学のグローバル化指標をみると、日本全体でトップテンに入っているようですね。国境を越えて人が行き来することは、とても良いことです。多様な価値観に触れることで人間力が高まりますし、人生を変えてくれる機会を多く得ることができます(私のOECD会議での経験のように)。そもそも、素敵なモノやヒトに触れると、人生が豊になりますよ。私も、そうした機会を提供する場にいることがとても楽しいです。それと、より重要なことですが、キャンパスに緑が多いことも、とても良いと思います。