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2018/11/13

セントマーチンズ大学で共同シンポジウム開催、ポートランド大学で道徳教育とサービスラーニングの意見交換

去る11月2日から11月5日にかけて、本学の提携校であるセントマーチンズ大学とポートランド州立大学を訪問した。セントマーチンズ大学とは、留学交流協定締結30周年を記念してシンポジウムを共同開催するためである。ちょうど30年前、この留学プログラム設立の担当者が私とユング名誉副学長であったため、実に感慨深いものがある。報告は同大学への留学経験もある国際交流センター長の犬飼教授にお願いした。

報告書にもあるが、特に地元の名士などを集めたブラックタイの正式晩餐会Gala Dinnerではセントマーチンズ大学のヘンドリックス学長が、私たちのために60以上あるテーブルの中で、NO.1テーブルを用意し、冒頭の挨拶で、特別ゲストとして麗澤大学と私たちを紹介してくださったことには感謝申し上げたい。

つぎにポートランド州立大学まで足をのばしたのは、サービスラーニングの道徳的影響について調査し、意見交換するためである。報告は、今年スタートした本学大学院学校教育研究科道徳教育専攻で、私とともに海外での道徳教育の科目を担当する山下美樹国際交流副センター長にお願いした。

英語が堪能なお二人の助人が同行してくださったお蔭で、学問的にも、国際交流の点でもすこぶる実り多き出張となった。

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■犬飼孝夫先生(外国語学部・言語教育研究科教授・国際交流センター長)による報告

セントマーチンズ大学との交流30周年記念式典・記念シンポジウムを開催

 

2018年の今年、本学と米国ワシントン州にあるセントマーチンズ大学は、1988年3月に留学交流協定を締結してから30周年を迎えました。交流30周年を記念する式典とシンポジウムが11月2日(金)にセントマーチンズ大学で開催され、中山理学長と共に私が国際交流センター長として参加しました。

記念式典は午後1時30分からHarned Hallの110教室にて始まり、セントマーチンズ大学のロイ・ヘンドリックス学長とキャサリーン・ボイル副学長の挨拶に続き、在シアトル日本国領事館の山田洋一郎総領事からご挨拶を頂きました。両大学の学長、セントマーチンズ大学理事長、ワシントン州元上院議員、山田総領事が、今回の式典を記念して留学協定の改訂版に署名し、本学からはセントマーチンズ大学のヘンドリックス学長、デイビッド・スパングラー名誉学長、ジョセフィン・ユング名誉副学長に記念の楯を贈呈しました。セントマーチンズ大学からも中山学長と私に記念の楯を頂きました。

SMUとの調印式

記念式典に続いて午後2時から記念シンポジウムが開催されました。はじめに中山学長が “Learning and Well-being” (学問と幸福)と題して50分間英語で講演しました。続いて、”Experiential Learning in a Globalized World”(グローバル化した世界における経験的な学び)と題して、セントマーチンズ大学の4名の教授がパネルディスカッションを行いました。午後3時30分から、二十数年間にわたりセントマーチンズ大学との留学プログラムを担当してきた私が、”Thirty Years of Experiential Learning” (経験的な学びの30年間)と題して英語で講演し、続いて、セントマーチンズ大学のボイル副学長が “Faculty’s Role in Campus Internationalization” (キャンパスの国際化における教授陣の役割)と題して講演しました。

続いて、2017年度にセントマーチンズ大学から外国語学部の特別聴講生として本学に留学し、今年5月にセントマーチンズ大学を卒業したパトリック・カーナハンさんと、本学からセントマーチンズ大学に留学中の英語・リベラルアーツ専攻2年の守山良奈(もりやま・よしな)さんの二人が、 “My Study Abroad Experience”(私の留学体験)と題して、各自の留学体験談を発表しました。最後はセントマーチンズ大学に留学中の本学学生13名と現地学生の混成チームによる「ソーラン節」の踊りが披露され、交流30周年記念式典とシンポジウムは大盛会のうちにお開きとなりました。

中山学長による基調講演

犬飼センター長による講演

 

パトリック・カーナハンさんによる体験発表

守山良奈さんによるプレゼンテーション

 

SMUと麗澤大学の学生によるソーラン節

 

留学中の学生との懇親会

11月3日(土)には、本学の学生が大変お世話になっているセントマーチンズ大学国際交流室(Office of International Programs and Development)の教職員の皆さんと昼食を共にし、今後の交流プログラムについて意見交換を行いました。その日の夜は、ヘンドリックス学長から招かれて、セントマーチンズ大学が近隣の有力者を招いて毎年11月上旬に開催している、Gala Dinner(ゲイラ・ディナー)という公式の晩餐会に中山学長と共に参加させて頂きました。この晩のためにハワイ在住の著名なシェフ、ロイ・ヤマグチ氏が招かれ、約500名の招待客が料理を堪能しながらオークションに参加する形で、学生への奨学金が募られました。今回の一晩で、130万ドル(約1億4,700万円)の寄付があったとのことです。

Gala Dinnerにて挨拶を交わすヘンドリックス学長と中山学長

セントマーチンズ大学訪問に続き、11月4日(日)には中山学長と共に、本学の提携校であるポートランド州立大学でサービスラーニングに関連して意見交換を行うため、オレゴン州ポートランドに移動し、国際交流センターの山下美樹副センター長と合流しました。

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■山下美樹先生(経済学部・学校教育研究科 准教授・国際交流センター副センター長)による報告

ポートランド州立大学訪問:サービス・ラーニングの道徳的影響についての聞き取り調査と意見交換

 

2018年11月5日(月)、米国オレゴン州にあるポートランド州立大学(Portland State University)への訪問につき、大学院学校教育研究科道徳教育専攻の担当者として、中山理学長と国際交流センター長の犬飼孝夫先生に同行した。早朝から夕方まで、盛り沢山の訪問スケジュールを組んでいただき、大変実り多い訪問であった。

左より、山下先生、クレス先生、中山学長

本学と提携校であるポートランド州立大学(PSU)は、州の主要都市に位置し、大学と地域を結ぶ役割を過去30年間担っている。PSUのサービス・ラーニング(Capstone)は全米でも注目される存在であり、今回はそのコースについて伺い、意見交換をさせていただいた。そのCapstoneという科目は、教養課程(University Studies)の4年次に取る必修科目である。学部生はそのUniversity Studiesという必修の教養課程の1年次から3年次の間に、専門的知識、スキル、モチベーションを高め、4年次でこのCapstoneという科目のなかで地域貢献活動を行う。現在は、400にも上る種類のCapstoneが提供されている。

大学教員にとっても、この地域活動への取り組みを授業に導入することが業績評価に加味されることで、問題解決型の社会貢献活動を自身の授業に取り組む意識を醸成し、全学にその教授法を浸透させる追い風となっていると伺った。

30年前にサービス・ラーニング(Capstone)を取り入れた元PSU学長、ジュディス・ラメリー氏(Dr. Judice Ramaley, Former President of PSU)は、それを大学に取り入れることで、学部生の退学率の低減、ダイバーシティー施策(人種多様性、ジェンダーの平等)、第一世代の学生(first generation:両親が大学卒でない学生)の学びの支援と、就職前のキャリアスキルの向上・適職探しに役立ってきたと語る。また、社会貢献活動を全学挙げて行うことで、高い社会貢献を志す学生、教職員がPSUに集まり、現在は学生数がオレゴン州で一位となっているそうである。こうした都市の発展と共に歩む大学の取り組みに、オレゴン州の開拓精神が感じられる。

橋に掲げられている大学のモットー「知識をもって都市に貢献しよう:Let Knowledge Serve the City.」

今回の訪問は、私の恩師であるクレス先生(Dr. Christine Cress, Professor of Educational Leadership, Policy, and Service-Learning)とムディアム氏(Sally Mudiamu, Interim Director, Office of International Partnerships)を中心とした教職員の方々のご尽力によって実現した。特にクレス先生は、まる1日私たちにアテンドして下さった。

訪問当日は早朝8時から、Learning Gardens Laboratory (LGL)を訪問し、農園での授業を視察させていただいた。

ケリー先生(Dr. Sybil Kelley, Associate Professor, Leadership for Sustainability Education, and Director of Learning Gardens Laboratory)と、クプコ先生(Megan Kupko, Faculty, Senior Capstone)の指導の下、雨上がりの冷たく湿り気を帯びた新鮮な空気と土の匂い、鳥の声が聞こえる緑のフィールドで、10名ほどの異なる学部出身の学生たちと輪になり、まずは順番に自己紹介を行い、次に彼らから学びの成果について聞いた。それは知識レベルにとどまらず、食生活の見直し、収穫物、自然の恵みへの尊敬と感謝の気持ち、集団で取り組む上での協調性、社会や地域に対する責任感など、学生たちのさまざまな汎用的能力の向上につながっていることが伺われた。

左より、中山学長、クレス先生、犬飼先生

授業のイントロダクションセッションの風景

学生たちが収穫した野菜

農園

次に大学へ移動し、大学院教育学科学長のリン氏(Dr. Marvin Lynn, Dean, Graduate School of Education)とお会いし、社会的責任、公平公正、ダイバーシティー政策を基盤とした教育のカリキュラム作り、教育の施策について伺った。

中山学長とリン学部長

 

大学内に掲げられた、公平公正、ダイバーシティー政策のサイン「私たちは、全ての人種、宗教、性別、全ての国の出身者や性的指向を持つ人々を歓迎します。」
私たちはあなた方を支援します。ここに歓迎します。」

大学内のエレベーターに書かれている、スローガン「知識をもって若者を支援しよう:Let Knowledge Serve Our Youth.」

次は大学の学術革新を司る本部(Office of Academic Innovation)を訪れ、Capstone科目に関わる、コーディネーターのアルクズウィーニー氏(Jennifer Alkezweeny, Teaching, Learning, and Engagement Associate)、ディレクターのケリガン氏(Dr. Seanna Kerrigan, Capstone Program Director)と、講師のフィッツマウリス先生(Celine Fitzmaurice, Capstone Committee Chair; CBL Facilitator Center for Science Education)から、教員と地域パートナ―との橋渡しや、ファカルティーディベロップメント活動、教員が地域活動を行う際のサポート、シラバス作成、アセスメント、学生指導や教授法について伺った。例えばOffice of Academic Innovation本部の専門スタッフが、教員をサポートするために、地域パートナーを選出し、授業活動とのマッチングを行う。その具体的な活動例には、ポートランド市に季節労働者として来る、南米出身の労働者に、学生が語学と文化教育支援をするといった活動プログラムもある。また、もう一つ、この訪問以前に視察させていただいた授業を紹介したい。その授業では学生たちが4人一組になり、低所得者の一回の食事にかけられるおおよその金額をその家庭の収入から算出し(結果は約400円であった)、その予算で実際にスーパーに行く。そして、家族4人分のための栄養のバランスが取れた、しかも子供が喜ぶものを買うという課題が課せられた。その後、教室に戻ってから、各グループの購入した食材のいい点、悪い点についてディスカッションを行った。それらの意見には、いい点には「フルーツ、野菜がある点がよい」、悪い点には「ラーメンは塩分過多である」、「この予算では子供が喜ぶメニューは作れない」などがあった。この授業はCapstone授業の一例であるが、学生たちは学部を越えて興味のあるCapstone科目を400種類のクラスの中から選ぶことができる。

約400円で栄養バランスの取れた材料を選ぶ学生たち

購入した食品(インスタントラーメン4個、ソーセージ、キャベツ1個、バナナ3本)

買ってきた食品について、良い点と悪い点についてディスカッションする様子

購入した食品のレシート

昼食のミーティングには、大学院教育学科の教員、クラス先生(Dr. Christine Cress)をはじめ、今朝の農場でお会いしたケリー先生(Dr. Sybil Kelley)、原先生(Dr. Moti Hara)らがご同席下さり、私たちのさらなる質問に答えて下さった。

左より、クレス先生、ケリー先生、原先生、中山学長、犬飼先生

昼食後には、PSU副学長のジェフォード氏(Provost Susan Jeffords)を訪問し、麗澤大学とポートランド州立大学との提携校の書類の更新のための調印式を行った。国際交流関係部のディレクターである、ウィザック氏(Ron Witczak Executive Director, Office of International Affairs at Portland State University)も同席された。

PSU副学長のジェフォード氏と中山学長

左より、クレス先生、ウィザック氏、中山学長、犬飼先生

最後のミーティングには、大学院都市開発学科の学長である、パーシー氏(Dr. Steve Percy、CUPA (College of Urban and Public Affairs)からお話を伺った。都市開発学科においても、地域活動は不可欠であり。現在の取り組みで、高齢者対象の活動機会のパッケージ化を図っているという。高齢者の活用と健康寿命を延ばすための取り組み、学生の市民としてのアイデンティティーへの気づきとその開発、個人が市民として何ができるか、といった社会的に公正な世界を目指す取り組み、Social Justice, Social Responsibilityの概念に基づいた活動を展開している。PSUでは実際、65歳以上であれば無料で授業を受けることができ、現在500人以上の参加者がいるという。

今回のPSUでの聞き取り調査と意見交換のなかで、道徳教育のための人、社会、自然、地球との繋がりを維持していくための、様々な施策や教授法、アセスメントについて学んだ。アメリカで最も暮らしやすいまちと呼ばれるポートランドの街づくりに、ポートランド州立大学の取り組みは大きく寄与していることが伺われた。そこに魅力を感じて集まる教職員、学生が、大学の学生数を伸ばしていることも理解できた。また、この教養課程(University Studies必修コース)を構築し、維持し、発展させているのは、教職員の専門性とモチベーション、そしてそれを可能にする大学のシステムのみならず、大学が地域政府のメトロ (Metro:オレゴン州ポートランド都市圏の住民による投票で選ばれた議員により運営される)や、地元の大中小企業と強固なつながりを持っているところに、大学と地域を結ぶ取り組みが持続可能となっていることが見て取れた。

改めて、私たちを歓待して下さった、クレス先生を始め、関係者の皆様に深く感謝の意を表したい。

大学キャンパスの風景

大学キャンパス内を通るストリートカー